権威のある国際学会で、硬水が髪に与える影響についての研究成果を発表
世界の化粧品技術者が一堂に集う学術大会に選出
── 去年の夏に、硬水が原因で髪のコンディションが悪くなることやコンディションを保つための対策を教えてもらいましたが、この硬水をテーマにした研究成果を国際学会で発表されたとか?
平山:そうなんです。去年の10月にブラジルで開催された「第34回IFSCC Congress 2024 イグアス大会」に参加してきました。化粧品業界のオリンピックと言われているような権威のある学術大会で、今回は世界26か国900題以上のエントリーがあり、タカラベルモントからは2題が選出されました。
── 26か国とは国際色豊かですね。私たちが知っているような化粧品メーカーも参加されているんですか?
平山:そうですね。化粧品メーカーを中心に、化粧品原料のメーカーや大学で研究されている方々も選ばれていました。発表の内容としては、こういう影響があるからこうした方がいいですよという現象の解明と対策もあれば、こんな新しいテクノロジーでこんなことができますといった技術・開発系もあって、特に最近の傾向としてはSDGs関連の研究内容も多いですね。そのようななか、“硬水が毛髪にもたらすさまざまな後遺症からの解放”を研究タイトルとし、発表しました。
硬水は髪の内部にも影響を与える!?
── 難しそうな内容ですね。
平山:海外に行かれたことがある方は、硬水が毛髪に触れるとざらついてまとまりが悪くなるという実感をお持ちだと思うんですけど、それは前回もお伝えしたとおり硬水に含まれたミネラルが髪に残留してしまうというのが原因になります。
── 前回、硬水は髪だけでなくシャンプーの泡立ちにも関係していると教えてもらいました。
平山:そうでしたね。そして今回の学会で新たに発表したのが、もっと本質的というか、硬水は毛髪の表面だけでなく内部にも影響を与えているという内容です。
── 硬水に含まれるミネラルが髪の表面につくだけでなく、内部にまで浸透することでパサつきを引き起こすということですか?
平山:そういうことになります。硬水に触れると、毛髪がもろくなるというのが伝わりやすいですかね。破断強度と言って、毛髪にどれくらいの負荷をかけるとちぎれるかという強さを表す基準があるんですけど、この数値が高ければ高いほど、強い負荷をかけないとちぎれないという実験結果があります。この棒グラフの左側が軟水で、100という数値でちぎれますと。次に真ん中が硬水なんですが、軟水よりもグラフが少し短くなっているのがわかるかと思います。
── 確かに。ということは、硬水はより弱い負荷でちぎれてしまうということですね。
平山:その通りです。日本は軟水地域とされているので、硬水地域であるヨーロッパに行ってシャンプーを繰り返すと、髪がちぎれやすい状態になってしまう可能性があります。
硬水が髪にもたらす影響は持続するという新事実
── かなり興味深い結果ですね。どうやって検証したんですか?
平山:毛髪を掴んで引っ張る機具があるんですけど、それを使ってどれくらい負荷をかけるとちぎれるのかという実験を重ねました。ただ、アジア人の毛髪で研究しているので、ヨーロッパの人の毛髪だとどう変わるのかは、現段階では定かではなくて。
── なるほど。ちなみに右側の棒グラフは?
平山:これは毛髪を硬水に一定時間つけてから、そのあと軟水につけてももろさが改善されなかったという結果を示していて、一定時間硬水に触れるとその後軟水の環境に戻ったとしても、ある程度硬水の影響が持続するというエビデンスになります。
── 硬水地域での滞在が長くなるほど、日本に戻ってきてからもパサつきやまとまりの悪さが続いてしまう、気になってしまうということですか?
平山:その可能性があるということですね。
硬水によるさらなる影響とケア方法をおさらい
カラーした髪を軟水、硬水につけ置きすると…
── こちらの3つの写真は褪色の変化ですか?
平山:そうです。海に行くとヘアカラーが褪色されると思いますが、UVは確実に関係しているとして、海水の影響はどれくらいあるんだろう、という起点から実験しました。左の写真は髪を染めた直後の毛束で、真ん中の写真が髪を染めてから30分ほど軟水につけた毛束なんですが、そこまで変化がない。続いて右の写真は同じく30分ほど硬水につけた毛束で、褪色具合が一目瞭然だったんです。
── こんなに顕著なんですね。しかも色を見比べられるので、違いがわかりやすいです。
平山:私たちも想像していたより大きな差が出ました。ヘアカラーの視点からも、やはり硬水に触れる時間は短い方がいいんだなということがわかりました。
硬水地域に行く時に覚えておきたいこととは?
── 前回、硬水のケア方法の一つとして軟水のミネラルウォーターで髪をすすぐことを教えてもらいましたが、今の話を聞くとなおさら欠かさずやった方がよさそうですね。
平山:そうなんです。日本に帰ってから軟水でシャンプーすればいいやということではなく、滞在している間は毎日やった方がいいですね。海水浴のあと、家に帰ってから髪をすすぐのではなく近くでシャワーを浴びると思うんですけど、あの感覚と近いのかなと。硬水でシャンプーした直後に軟水で流すのは、毛髪がもろくなった状態を最小限にとどめるという意味ではすごく重要です。あとは先ほども話しましたが、改めて硬水に触れる時間を短くしようという考えを提唱していこうと考えています。
── 硬水に触れないようにという意味では、同じく前回聞いたドライシャンプーも改めてポイントになりそうですね。
平山:はい。今回の新たな研究成果を通じて、以前にお伝えしたことがより重要なんだなと感じました。
どんな髪質の人でも軟水で洗う方が手触りがいい
── 今回の学会で、3日間ポスターセッションをされたとのことですが、手応えであったり各国の方々の反響だったりはどうでしたか?
平山:イギリスやブラジルの方に話を聞くと、硬水地域に行くと私たちと同じようにシャンプーをしたあとの髪質の悪さに悩まれているようでした。それにイギリスの方なんかは、「日本でシャンプーすると髪質がよくなるよ」と話されていて。エビデンスレベルではないにせよ、国や地域を問わず、どんな髪質の人でも硬水より軟水の方が手触りはいいんだろうなと確信しましたね。実際にその国に行かないと聞けないような貴重な声なので、そこを知れたのは非常によかったと思います。
── 研究結果を発表するだけでなく、情報交換の場でもあったんですね。
平山:そうですね。また、この学術大会では3つのアワードがあって、残念ながら私たちタカラベルモントは受賞できなかったんですけど、3つのアワードを総なめしたのが日本の企業だったんですよね。日本の化粧品技術はすごく進んでいると改めて実感しましたし、この結果にすごく刺激を受けました。これからも化粧品業界に影響を与えられるよう精進したいと思います。
──前回に引き続いて、硬水に関する知識をより深めることができました。日々進化を続ける〈LebeL〉の研究開発については、こちらのサイトをぜひチェックしてみてください!
TEXT_Yoshio Horikawa(TRYOUT)
ILLUSTRATION_Toshiya Kawashima(TRYOUT)